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ITアーキテクト 鈴木雄介のブログ

論理を突き詰めてもDXは進まない - EQ(感情知能)の可能性

コンサルタントとして外部からDXの推進を支援していても、当然ながら思ったように変革が進まないことがあります。そこには様々な理由がありますが、なかなか論理だけでは語れない部分もあるなと思っていたときにHyper-collaboration社の吉田さんに出会い、EQ(感情知能)というものについて知りました。

感情的になるのは良くない

ビジネスの場で「感情的になる」のは良いことではないでしょう。「嫌いだからやらない」「好きだから優遇する」というのは許されない行為です。感情の反対は「理性」であり、ビジネスの場では理性的な行動が求められます。論理を組み立て、その整合性と正当性によって物事は判断されるべきです。

一方で、人間というものは「感情を切り離して何かをする」ということが簡単にできるわけでもありません。であれば、感情を上手にマネジメントし、理性とつなぎあわせて成果をあげたほうがいいよね、というので生まれたのがEQだと理解しています。

EQ(Emotional Intelligence Quotient)とは、感情知能と訳されますが、こちらの記事によれば、

感情知能とは
(1) 情動を正確に知覚する能力
(2) 思考を促進するために情動を利用する能力
(3) 情動とその意味を理解する能力
(4) 自己の情動を管理したり他者の情動に対応する能力

と定義されているそうです。簡単にいうとEQとは「自分の感情を理解し、管理し、成果につなげる力」という感じでしょうか。

感情に流されず、抑えず、利用する

「感情を管理する」と言っても「感情に流されない」「感情を抑える」ではなくて、自分の感情を受け入れて、その感情を利用する、というような取り組みです。

たとえば、誰かに何かをやってもらう必要があるとき、その過程で相手に「イラッとした」としたとします。イラッとしたとしても、何かをやってもらわないといけません。

もちろん、「その感情を抑えながら、淡々と依頼する」というのも手段です。あるいは、「依頼してやらないのは相手のせいだから放置」というのもありでしょう。

ただ、そこで自分の感情を理解し、利用して、行動を変えてみるのはどうしょうか。たとえば、そのイライラが「期待」から生まれたのか「嫌悪」から生まれたのかを理解できると、次に取るべきアクションを変えることができます。

相手に「期待」しているのに、思ったとおりに動いてくれないのであれば、依頼をより具体的に伝えてみてはどうしょう。そうではなく、相手に対する「嫌悪」から生まれているなら、うまく距離を取ったほうがよさそうです。たとえば、誰かを仲介するとか。

つまり、なんらかの感情が生まれたら、そこで一歩立ち止まり、戦略を立て直す機会として捉えるのです。感情に流されるわけでもなく、抑えるのでもなく、感情が発露したエネルギーを利用して、成果を上げるための方法を考える。

DXと感情の関係

DXというのは、何らかの変化を生み出すものです。人間は本能的に変化を嫌います。今のままであれば、たとえ面倒だとしても未知のことは起きないのに、新しいことをしていらぬ苦労をするかもしれないなんて耐えられません。

もちろん、変化を楽しみ、苦労をしたとしても、新しい世界に行くことを好む人もいます。ただ、それは少数派です。大多数の人は、理想の新しい世界を望みはすれど、そこに向かう苦労は受け入れがたく、不安、イライラ、うんざり、悲しいなど、様々な感情がうまれていることでしょう。

それに対して「ビジネスだから感情なんか無視してやれ」とか、「現場の気持ちを考えると、あまり変えたくない」というのが、果たして成果をあげるために良い手段でしょうか。当事者の感情を流すのでもなく、抑えるのでなく、むしろ、それらのエネルギーを利用して変革を進めることができないかな、と考えています。

僕は「仕事を成功させるために相手の感情をハックして操作しろ」ということを言いたいわけではないです。ダークサイドに落ちてはいけません。ただ、自分や相手の感情を理解することは、自分を守ることにも、相手を尊重することにもつながると思っています。

そんなことを考えながら吉田さんと動画を撮りました。個人的には特別編の「ロジカルシンキングから変革のエネルギーは出てこない」という言葉が好きです。ぜひ、見てください。

「DXの推進に感情のエネルギーがつかえる!?DXとEQの意外な関係」
Part1:DX推進には感情に向き合うことも必要

Part2:DX推進には偉い人が「わからない」ことを認めて行動することが大切

Part3:DX推進担当リーダーが陥るパターンを考える 

特別編:「DXの推進に感情のエネルギーがつかえる!? DXとEQの意外な関係」