2012年12月15-16日に開催されたDevLOVE2012で「どうしたら良いシステムが作れるのか」というタイトルで講演をさせていただきました。
アーキテクチャとマネジメントについての講演は2年ぐらい前からしていますが、そこで考えてきたことをギュっとまとめたので相当密度の高い内容になっています。予想通り時間も足りず、ちょっと最後が駆け足で申し訳なかったです。前半部分とかを丁寧に見たい方は過去記事を漁ってもらうとよいかも。
この資料を作るにあたって1960年代からのIT技術とマネジメント手法の歴史を見直していたのですが、組織論や科学(認知学/複雑系など)の流れとの絡み合いは非常に面白かったです。
その中で「アジャイルって組織論なんだな」と当たり前の事実に(いまさら)気づけけました。スクラムのJeff Sutherland自身が「野中郁次郎から影響を受けた」と言っているんだから当然ですよね。
そう思って見てみれば、アジャイルのアプローチが組織論の実証主義化を受けていることがよくわかりますし、実証主義に対する「成功したものは美しいが、美しい(という思う)ものが成功するとは限らない」という批判がきれいに当てはまることにも気づきます。
そういえば @ryuzee さんに「スクラムのコンサルをしていると、どうしても組織論になっちゃう」みたいなことを言われたことがあって、当時は「マネジメント論なのに大げさすぎ」とか思ったのですが、いや、まさにそうですよねって反省しました。というかマネジメント手法としてスクラムを導入するのは相当に大変だと思います。組織を変えないと。
あとスクラムには自己組織化のような複雑系あたりの要素も混じっていて、これも時代背景に合致します。その最大級に中二病なのがジム・ハイスミスの「適応型ソフトウェア開発」で、えぇ、僕も熱にあてられてましたね。
複雑系とか、2000年前後の「6次の隔たり(ネットワーク理論)」とか、知的には面白いのですが、実証主義がコンピューティングパワーで進化だけで実学的には役に立たないという批判もあるわけで、そこはアジャイルが乗り越えるべき壁だと思っています。
なお、現在の組織論というところでは、現実世界でソーシャルばやりの中、理論が追いついていないのかなぁと思っています(これぞ!っていう本や論文をご存じの方がいれば教えてください)。
ちなみに、一般的に言われる「オープンなコラボレーションが重要」っていう議論も「成功したものは美しい」の部類で、実際にはガバナンスがきっちりしている会社が「マネジメントなオープン」を実現しているだけかなと。ITでいえばIBMやSUNとオープンソースの歴史を見てみると黒歴史含めて興味深いですね(Tumblrで書きかけですが興味のある方はどうぞ「ORACLEとGoogleとSUNとIBMとオープンソース」)
というわけで、DevLOVE2012で多くの人が言っていたように、過去は「学ぶ」ものであって、結局は当事者が経験して蓄積していくことしか成功に近づく方法はないって事です。他人の成功を見よう見まねで真似しているだけでは本質には近づけません。むしろ、本質の周辺にいることで満足をしてしまうことが危険。
そんなわけで、みなさま引き続きがんばりましょう。