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ITアーキテクト 鈴木雄介のブログ

ITS/BTSは進捗管理に使えるのか - SIの現場で使えるチケット駆動開発

2013年8月24日にグロースエクスパートナーズ主催にて「SIの現場で使えるチケット駆動開発」というセミナーを実施させて頂きました。「チケット駆動開発」の共著者である阪井誠さん(@sakaba37)をお招きしたものです(togetter)。

僕は基調講演で「チケット駆動で加速する、顧客と協業するプロジェクトマネジメント」を話しました。主にプロジェクトマネジメント論の中でチケット駆動の適用箇所について話をしています。

僕はアジャイルでもウォーターフォールでもプロジェクトに合ったものを選べばいいと考えています。どちらの手法にもメリットがありデメリットがあります。ただ、どちらの手法にしてもチケット(駆動)は有用なツールです。SIの現場で言えばチケットはウォーターフォールの限界を埋めるのに有効なので、積極的に活用をしていただきたいです。

(以前、「アジャイルがダメだと思う7つの理由」なんてものを書いたので、僕がアジャイル嫌いだと思っている人もいそうですが、まったくそんなことはありません。自社案件でも活用しています。ただ、盲目的にアジャイルが良いわけではない、というメッセージです)


ITS/BTSは進捗管理に使えるのか
さて、個人的に面白かったのは「組織パターン」の訳者である和智さん(@digitalsoul0124)も交えてのパネルディスカッションです。一番盛り上がったのが「ITS/BTSは進捗管理に使えるのか」という話題でした。

僕個人としては「ウォーターフォールのように長期な計画を前提としている場合、進捗管理WBS/ガントチャートでやるべき」であり、BTSを利用するのは危険だと考えています。

長期的な計画を立てる場合、タスクの総量だけではなく、タスクの前後関係を把握する必要があります。そうしないと「工数的にはOKだけど、日程的にNG」ということが把握できません。ガントチャートはタスク間の関係を時間的な視点を把握することができるのです。

また、予実管理も全体を見通して把握することができます。いわゆる稲妻線ですが、プロジェクト全体の視点から「ここは遅れていてもかまわない」というような判断ができるのは大きなメリットです。

一方で、アジャイルは計画そのものを小さく(数週間)するので、全体の状況が個別の積み上げで判定できます。チーム内でタスク間の前後関係も共有されているからこそ、ガントチャートのようなツールがなくてもうまくいくのです。


ITS/BTSへの期待と現実
ですが、ガントチャートには問題もあります。パネルの中で参加者からは「BTSで進捗管理をすると、個別タスクの報告をチケットを経由してやれるから便利だと思っていた」という声が出ました。ガントチャートはPMが管理しているので進捗報告を受け取るのが面倒なのです。このニーズは非常によくわかりますし、多くのPMが実は期待したいところだと思います。

でも、PMとして考えると「個別の状況は分かるけど、全体の状況が分からない」という事態になる可能性があり、こういった目的での安易なBTS利用は危険だと思います。残念ながらWBS/ガントチャートとBTSを併用するというのが現実的な判断でしょう。

なお、BTSにはガントチャートツールが付いていたりしますが、僕としてはビューアーであり、いわゆる進捗管理のマネジメントツールとしては不足感があると思います。ただ、活用できる場面もあるはずなので、JIRAでいえばリックソフトさんのWBSガントチャート for JIRAなどはチェックされるとよいでしょう。

阪井さんが「チケット駆動コミュニティでも、チケットに作業予定日をいれるのはアンチパターンだという人もいる」と言われていましたが、それほどチケットで日程面での進捗管理をするのは簡単ではないのです。


手段と目的を履き違えてはいけない
そもそも論ですが、WBS/ガントチャートトップダウンで計画を落とし込んでいく手法であり、ITS/BTSはボトムアップで事象を積み上げていく手法です。PMはこれらの特性を理解したプロジェクトマネジメントに活用していく必要があります。

なので「BTS(Redmine/JIRA)はプロジェクト管理に使える」というような安易な発想はやめましょう。使えないことはないですが、使ったからといって上手くいくわけではありません。手段と目的を履き違えてはいけません。

ここら辺、阪井さんも「チケット駆動開発をプロジェクト管理の視点だけで考えてはいけない #gxptech - ソフトウェアさかば」というエントリをいただき、またチケット駆動開発のもう一人の共著者であるあきぴーさんもust視聴後に「チケット駆動開発がWF型開発と相性が悪い理由 - プログラマの思索」を書かれています。ぜひ、ご参照ください。



<講演の動画は公開予定です。公開されたら、ここにリンクを掲載します>



チケット駆動開発

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組織パターン (Object Oriented SELECTION)

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